こんな時だからこそ感謝の気持ちを忘れずに

新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、東京都や大阪府など7都道府県に限定されていた政府の非常事態宣言が、4月17日 とうとう全国道府県にも適用されることとなった。医療崩壊が目前に迫っている状況を考えれば当然であり、どちらかといえば遅すぎた感は否めない。

医療関係者の皆さんは感染の危険を顧みず、人員不足、用具・機材不足、睡眠不足の過酷な環境のなかで増え続ける患者の治療にあたっている。確かに病院や介護施設などでクラスター感染が発生しているが、感染していないにもかかわらず、そこで働く看護師や介護士に対する偏見があちこちで見られるという。実に嘆かわしいことである。

また感染のリスクのある状況でも、国民の日常生活が維持できるよう流通を担うトラック運転手や配達員、スーパーマーケットの店員などの皆さんは一生懸命働いている。

コロナウイルスとの戦いは世界大戦と同様である。戦時下では国民一人ひとりに当然のことながら我慢が強いられる。更なる外出の自粛を心掛けなければ、感染の拡大はなかなか収まらないと専門家は警告している。

4月14日付の毎日新聞の報道によれば、食品スーパー主要3団体は、新型コロナウイルス感染拡大を受け、店舗の営業継続に向けて来店客に協力を呼び掛ける声明を出したという。声明では「お客様のストレス増加で、品薄や欠品、混雑に対して心無い言葉が増えている」と懸念を表明し、クレーム対応で疲弊した従業員から退職の相談が相次いでおり、客側に節度ある対応を求めた。

ご存じのように小中学校が休校になったり保育所が閉鎖されたりしたため、家で子供の面倒を見なければならなくなった。そのためスーパーなどで働いていた主婦の方々が辞めざるをえなくなり、パートの確保がままならなくなっている。レジの数も縮小せざるを得なくなり並ぶ時間も長くなっているのも事実である。

不要不急の外出の自粛が続けばストレスが溜まることは理解できるが、しかし客だからと言ってそのストレスをこのような感謝されるべき人々にぶつける人がいるのには開いた口がふさがらない。日本人として本当に嘆かわしいことである。次に紹介するドイツのメルケル首相の演説の爪の垢でも煎じて飲んでいただきたい。

メルケル首相は3月18日の新型コロナウイルスに関する特別演説の中で、「この機会に何よりもまず医師、看護師、あるいはその他の役割を担い、医療機関をはじめ我が国の医療体制で活動してくださっている皆さん、皆さんはこの闘いの最前線に立ち、誰よりも先に患者さんと向き合い、感染がいかに重症化しているかも目の当たりにされています。

そして来る日も来る日もご自身の仕事を引き受け、人々のために働いておられます。皆さんが果たされる貢献はとてつもなく大きなものであり、その働きに心より御礼を申し上げます」と医療関係者に対する感謝の意を表したあと、「さてここで、感謝される機会が日ごろあまりにも少ない方々にも、謝意を述べたいと思います。スーパーのレジ係や商品棚の補充担当として働く皆さんは、現下の状況において最も大変な仕事の一つを担っています。皆さんが、人々のために働いてくださり、社会生活の機能を維持してくださっていることに、感謝を申し上げます」と述べ、日ごろ裏方的な仕事に携わっている人々にも、メルケル首相は自ら感謝の意を表している。

米国ノースイースタン大学のデビッド・デステノ心理学教授によれば、人間の自制心、モチベーション、やる気に関わるのは意志よりもむしろ「感情」の力であるという。感情といっても個人的な喜怒哀楽ではなく、「社会的感情」すなわち社会生活を送るうえで人間に備わった感情である。

具体的には、「感謝」、「思いやり」、「誇り」の三つを指す。「感謝」とは他者が払ってくれた犠牲に対して抱く感情で、「思いやり」は他者を気遣う意欲を引き起こす感情。「誇り」は周囲に役立つスキルを保持していることを名誉に思う感情である。

デステノ教授は、感謝の気持ちが自制心や忍耐力を強化することを実験で証明した。
感謝の心を持っているとき、人は他者のために自分の時間や労力を犠牲にしてもよいと考えるようになる。そしてこの他者には、「未来の自分」も含まれるという。

つまり、感謝の気持ちを抱いているときは、目の前の誘惑を犠牲にしてでも「将来の自分」にとってポジティブな選択をすることができる。多くのことに感謝する気持ちを持つ人ほど物事へのモチベーションが高くなり、結果的に、数年先にはより大きな報酬(果実)を得ることになると、感謝の気持ちを持つことの大切さを論じている。

令和2年(2020年)4月21日
株式会社JAPAN・SIQ協会
代表取締役 金子 順一