顧客満足度指数や口コミだけでは見えない「一流と二流とを分けるもの」

手に取って確かめられる商品と異なり、ホテルや旅館などの場合は、パンフレットや写真などを見ても、実際に宿泊し経験してみなければ、サービスが良いか、食事が美味しいか、部屋の清掃は行き届いているかなど事前にその宿泊施設が満足できるかどうか判断することは、なかなか難しいものです。

そのため、インターネット上の口コミや調査会社による満足度調査の結果などを参考にする利用者は多いと思いますし、わたくし自身も初めての宿泊施設に予約を入れるときは、「じゃらん」の口コミを参考にさせてもらっています。もちろん100%正しいとは申しませんが約80%は口コミ通りです。

手元にサービス産業生産性協議会が発表した2016年度の「日本顧客満足度指数(JCSI)」がありますが、コンビニエンスストア、シティホテル、ビジネスホテル、飲食、カフェ、事務機械の6業種について調査したもので、ヘッドのタイトルが『セイコーマートが1位に返り咲き ビジネスホテル上位はシティホテルを上回る高評価』と書かれています。

シティホテル1位の帝国ホテルの顧客満足の指数は80.5、ビジネスホテル1位のリッチモンドホテルの顧客満足指数は80.9です。確かに、ビジネスホテル1位のリッチモンドは80.9で、帝国ホテルの80.5より高いので、このタイトルを見た一般の消費者は、シティホテルより ビジネスホテルのほうがサービスが良いのかな~?と思い込んでしまうかも知れません。

しかし、一般常識に照らしてみれば、リッチモンドホテルのほうが帝国ホテルより、サービスも、施設も良い一流ホテルと思っておられる方は殆んどいないといってよいと思います。

では、実際に利用した宿泊客は何を基準に満足するのでしょうか?
先ほども述べましたが、実際に宿泊し体験しなければ満足度が高いか低いか分かりませんが、それは利用者の事前期待値に大きく関わっているのです。

お客様は予約したホテルに対し、あらかじめ料金がこのくらいだから部屋はそんなに広くはないし、ベッドや調度品も一般的な品質であろう、またサービスのレベルもこちらから頼めば支障のない程度に対応してくれるだろうなどという考えをもってチェックインします。このようにお客様が利用する以前に抱いている期待の度合いを事前期待度と呼んでいます。

そして、利用後に感じた実績評価が事前期待度を上回れば、お客様の満足度は高くなり、反対に下回れば満足度は低くなります。また、同じホテルでも、宿泊者それぞれの事前期待度は異なりますので、提供されている品質が同じでも、事前期待度の高い利用者は満足度の数値も低くなり、事前期待度の低い利用者は満足度が高くなります。

ですから、このような数値はあくまでも同じ業種の中だけでの比較数値として参考になさるのが適切ではないかと考えます。

では、一流ホテルとはどんなホテルを指すのでしょうか?
あくまで、まったく私の個人的な見解ですが、重要な要素は次の5項目です。

  1. (1)古き佳き伝統を守っていて、メンテナンスもしっかりしている。一方、機能的な面では常に新しい設備を取り入れ、利用者に快適性を提供している。また、料理も時代に即したものを提供している。このため、親子何世代にもわたって利用している顧客がいる。
  2. (2)経営理念、ビジョン、ミッションなどを社員全員が共有して日々の業務に生かしている。また、顧客視点を大切にし、長期的な観点にもとづいた経営がなされている。
  3. (3)社員の教育に熱心で、人材の育成に力を入れている。離職率も他社と比較して低い。
  4. (4)顧客満足(CS)を達成するために、従業員満足(ES)を優先している。そのため職場の雰囲気も明るく、スタッフが「おもてなし」の心に溢れ、いつも笑顔でお客様に接している。
  5. (5)利用しているお客様の質が高い。そのため、100%完全なサービスが要求される。

(1)から(4)までは経営トップとしての資質や方針にかかわる要素です。「魚は頭から腐る」と いわれているように、ホテルを含め企業の成否はトップ次第といってもよいと思います。

そして、あまり取り上げられない項目ですが、一番重要なことは(5)の要素です。一流と呼ばれるホテルには何ともいえぬ優雅な落ち着いた雰囲気が漂っています。接客するスタッフの質の高さもありますが、その素晴らしい雰囲気は利用している質の高い一流のお客様が醸し出しているのです。

また、ホテルのスタッフは、その知性と教養のあるお客様から様々な知識や振る舞い方などを日々学ばせていただいているのです。一方、このような一流のお客様は事前期待値の高い方々ですので、二流のホテルであれば許されるというか指摘も受けないような小さなミスやホテル側では気づいかないような些細な言動でも指摘されてきます。

ホテルオークラに45年間在籍していた経験から、お客様が指摘をなされてくるときは、必ずといってよいほど「オークラさんだから言うのよ・・」という言葉が一言あってからお話をされます。帝国ホテルの方も同じような事をおっしゃっています。

ですから、お客様から「◯◯ホテルさんだから言うのよ・・」という前置きを言ってもらえるホテルが一流ホテルの証なのかも知れません。ですから、「一流のホテルは一流のお客様によって一流が成り立っている」のであるといっても 過言ではないのでは?というのが私の持論です。

2017年5月19日
株式会社JAPAN・SIQ協会 代表取締役 金子 順一