人は一人では生きていけない

2014年、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申しあげます。

新年に受け取った賀状のなかに、私が総支配人としてホテルオークラから派遣され再生に成功したEホテルの社員だった男性からの賀状がありました。彼はEホテルに勤務したのち、名古屋のMホテルへ転職し、部長職まで昇りつめました。

昨年60歳でリタイアし、いまは趣味のカラオケ三昧の毎日でストレスのない楽しい毎日を送っているという詳しい内容の賀状でしたが、終わりの文節に次のようなことが書かれていました。

私がEホテルに着任早々のころ、彼はKオーナー会社から派遣されていた社長に対し、宴会の利益率について直接意見を具申したが、社長はホテルのオペレーションに疎いため、自分の主張を理解してもらえず最悪の状況に陥っていたとき、私が彼の意見も一理あると社長に詳しく説明して助けてくれたことを、今でも覚えていて感謝しているという内容でした。

しかし、私の脳裡にはこのようなことがあったことなどまったくといってよいほど残っていません。それもそのはず、1998年、約15年前の出来事ですし、自分としては当たり前のことと思って行動していたことなどは、記憶には残らないものです。でも、このように15年経った今でも感謝してもらっていることに、新年早々嬉しくなりました。

正月休みに木下晴弘著「涙の数ほど大きくなれる」を一読しましたが、次のような感動的な話が載っています。
あるレジ打ちの女性が、レジ打ちと言う単純な作業に嫌気がさしはじめていたころ、若い時の日記を読み直し、どうせならこの単純な作業であるレジ打ちを極めようと決心します。そして、レジ打ちを極めると余裕ができ、お客さまの顔や癖を覚えられるようになり、お客さまとのコミュニケーションを取ることが楽しみになってきました。

そして、ある日「今日は忙しいな」と感じつつ、いつものようにお客様との会話を楽しみながらレジ打ちをしていると、店内放送で、「どうぞ空いているレジにお回りください」と呼びかけましたが、すぐに「重ねてお願いいたします。空いているレジにお回りください」と2回放送があり、はじめて、他の5つのレジが空いているのに自分のレジにだけお客様が並んでいるのに気づきました。    

店長が出てきて並んでいるお客様に直接お願いしましたが、お客さまは「放っといてちょうだい。私はここに買い物にきてるんじゃない。あの人としゃべりに来てるんだ。だから、このレジじゃないとイヤなんだ」。その瞬間、彼女はワッと泣き崩れました。そして、仕事というものはこれほど素晴らしいものなのだと、はじめて物事の本質に気づいたという物語です。

このような感動的な10のストーリーを紹介していますが、「おわりに」の章を 『彼はベンチャー企業を立ち上げたが、なかなか上手く行かず、何度かくじけそうになったが、そんなとき誰かが支えてくれたお陰で、いま自分がここにいる。

また、同時に自分も知らず知らずのうちに誰かの支えになっているはずです。それはあなた(読者)も同じです。そして、様々なことを経験をしたなかで、当たり前のことであるが、「人は一人では生きていけない」ということを実際に体感した』 といった主旨で結んでいました。

私自身も、二つのホテルを再生するにあたっては、デフレ不況で業績が悪化している時に、タイミングよく大口の宿泊予約を頂戴したり、貴重な裏情報を教えていただいたり、トップダウンでパッケージ商品に組み入れていただいたり、金融機関から60%もの債務免除をしていただいたりと、本当に様々な方々に支えていただきました。

そして、私の主義・主張を理解して付いてきてくれた社員のお陰で再生に成功することができたのです。一方、最初に紹介した男性のように、私が彼の支えになっていたことも知りました。「涙の数だけ大きくなれる」 を読んで、自分の姿を重ね合わせ、改めて「人はお互いに支え合って生きている」ことを再確認した新春でした。

2014年1月12日  株式会社JAPAN・SIQ協会 代表取締役 金子 順一