その道の巨匠と呼ばれている人の飽くなき情熱

上柿元勝シェフといえば、日本におけるフランス料理の世界では誰一人知らない人はいないというフレンチの巨匠です。先般、この上柿元シェフと個人的にお食事をご一緒させていただく機会に恵まれました。

口幅ったい言い方かもしれませんが、彼の人間としての心構えというか、物の考え方が私と似通っているところがあるためでしょうか、私がホテルオークラ福岡を最後にリタイアしてから9年も経っていますが、関西へいらした時は食事をしながら議論したり、世間話に花を咲かせたりしています。

彼は、人との信頼関係を築くこと、すなわち信用されることが一番大切でお金では買うことのできない財産であるという信念の持ち主です。そして、信用を大切にして、情熱をもって一生懸命働けばお金は後からついて来るもので、そのお金も世間並みの収入があればよい。
そして、幸せな生活を送っていく上で、もう一つ重要なのは「心の豊かさ」ですとお話ししてくださいました。

上柿元シェフは、毎晩寝る前に欠かさず、きょう一日充実した時間を過ごせたことに対し「有難う」と感謝の言葉を声に出してから就寝する。翌朝目覚めたときも、同じようにきょうも一日元気で働けることに感謝して「有難う」と声を出してから起床するそうです。

『中学の頃、仏壇と神棚を朝晩拝む祖母に何を祈っているのか聞いた。祖母は、朝は一日無事で過ごせるように祈り、夜は無事に過ごせたことを感謝していた。

「ケガをしたら?」ときくと「この程度のケガで済んだと感謝する」と祖母。では誰かが死んだら?「無残な死に方でなくてありがとうって感謝する」「当時は神や仏は頼りにならないって思った程度。何十年もたってわかったけど、これってプラス思考だよね」。

波乱万丈な自らの半生を振り返ると、祖母のこの発想が原点にあったような気がしてならない。』

2014年7月11日付の読売新聞夕刊 “いま風 金曜日”という欄に「何ごともプラス思考でいこう」というタイトルで宮城学院女子大学の平川 新学長のお話しが掲載されていましたが、その一節です。
これを読んだあとだったので、上柿元シェフのプラス思考の行動に改めて感心した次第です。

秋には前から行きたかったプラハに行ってくる予定ですという。海外へ行くのは、検食旅行でも、ある程度は仕事の肥やしになるかも知れませんが、彼の場合は、一流レストランの厨房に入り、実際に現地の料理人と一緒に仕事をして、彼らの調理法、食材、流行などを肌で感じとって帰ってきて自分の料理に生かしているのです。ですから、彼の料理はいつも新しくて美味しいのです。64歳になっても絶えず成長を続ける情熱には本当に頭の下がる思いです。

京都の料亭「菊乃井」の主人村田吉弘さんも、最近出版した「儲かる料理経営学」という本の対談の中で 『その(上柿元シェフの)立場と年齢で、新たに料理の勉強をしようとする意欲は、やっぱりすごいですよ。世界中どこへ行ってもグランシェフですから、あぐらをかいていても何もしなくてもいい。それでもまだ高みを目指しているんですね。若い者が見習うべきは、その情熱です。うちでも朝から晩まで働いて、休憩も取らず誰よりも元気だった。こっちが腰、痛くなりましたわ。』 と述べられています。

(註)上柿元シェフは、ご自分の料理の幅を広げるため3か月間、「菊乃井」の厨房で実際に働き、日本料理、とくに出汁の取り方を学んでいるのです)

その道の巨匠といわれている人の凄さを実感し、情熱、信用、プラス思考、感謝の大切さなど改めて教えていただくことができ、同席した私どもJAPAN・SIQ協会の米谷専務とともども感謝の念で一杯です。

2014年8月11日  株式会社JAPAN・SIQ協会 代表取締役 金子 順一